「2人の問題なのに、どうしてこんなに協力してくれないの?」
私の友達のHさんは、旦那さんにこのような不満があるようです。
Hさんは現在32歳で、結婚して5年目になります。
夫婦仲はとても良いのですが、まだ子供はおらず、妊娠したこともありません。
Hさんの妹やまわりの友人に、去年立て続けに赤ちゃんが産まれ、いつかは子供が欲しいと思っていた気持ちがさらに強くなりました。
以前、「一定期間子供が出来ない夫婦は不妊症」と聞いたことを思い出したHさん。
「それって私たちのことだよね」
と焦りを感じ、婦人科で不妊治療の相談をして、現在は治療のために通院中です。
しかし、どうも旦那さんがあまり乗り気ではなく、検査等にも協力的ではありません。
Hさんはそのうち1人で治療に向き合うことが辛くなってきたため、ネットで夫に協力的になってもらうための方法を探してみました。
そして、同じような悩みを抱えながら長く治療をしている方などの意見を参考に、Hさんなりに旦那さんにはたらきかけてみました。
すると、2人で前向きに治療に取り組めるようになったのです!
この記事では、そんなHさんが実践した、不妊治療で夫の理解を得られる3つ方法をご紹介します。
不妊治療とは?
不妊とは、正常な夫婦生活を送っているにも関わらず、一年以上妊娠に至らないことを言います。
今や不妊治療を受ける夫婦は6組に1組と言われ、それだけ不妊治療は私たちの生活に浸透してきています。
しかし、実際にどのような治療をするのか知っている人は少ないのではないでしょうか。
ここでは妻と夫、それぞれどのような検査や治療をするのか、みていきたいと思います。
女性の検査・治療方法
妻と夫共通して、治療に移る前に詳しく検査をするのが一般的です。
女性の場合の検査は次の通りです。
超音波検査
妊娠の妨げになるようなポリープ等がないかの確認をします。
血液検査
卵巣機能に異常等がないかの確認をします。
子宮卵管造影検査
卵子が排出される卵管に閉塞がないかの確認で、痛みを伴うため、局所麻酔等を用いる場合もあります。
この他にも患者の状態に合わせた様々な検査が行われます。
その検査結果によって治療が行われるのですが、詳しく検査をしても不妊の原因がわからないことも多くあります。
引用元:ロート製薬 男性も女性も知っておくべき「妊活」の正しい知識
このイラストは子宮の中の自然妊娠の流れです。
排卵から受精、着床と進みますが、このうちのどれか1つでもうまくいかなければ妊娠には至りません。
原因を特定するのが難しい場合も多いので、そんな時は大きく分けて3つのステップで治療を進めていきます。
タイミング療法
超音波検査や血液検査で排卵日の予測をします。その排卵日のタイミングで夫婦生活をもつよう指導され、自然妊娠を目指します。
通院頻度は月に2.3回程度です。
人工授精
精子を直接子宮に送り込むもので、タイミング療法よりも奥に精子を入れることで妊娠の可能性をあげます。
通院頻度は月に3.4回で、費用は月に3.4万円程度です。
体外受精
人工授精を5.6回行っても妊娠がない場合、確率が大幅に上がる体外受精へとうつります。
35歳以下の女性なら、体外受精によって約6割が妊娠に至ると言われています。
体外受精は、卵子と精子を体外で受精させ、数日培養した状態の良い受精卵(胚)を子宮に戻します。
- 薬による排卵誘発
- 卵子の採取
- 子宮を1ヶ月程休ませる(患者による)
- 培養液内で受精卵の培養
- 子宮を受精卵の着床に備えて整える
- 受精卵(胚)を子宮に戻す
などのたくさんの工程があるため、一周期で3ヶ月前後かかります。
その間、1ヶ月に5.6回の通院が必要です。
費用は一周期につき40万円から150万円程度かかることが多いです。
この金額の幅は、患者の卵子の数や子宮の状態によって大きく変わります。
男性の検査・治療方法
男性の検査は主に次の通りです。
血液検査
ホルモンや染色体に異常がないか確認します。
精液検査
自宅か病院で採精し、精子の数や運動量を確認します。
精子の数と運動量は、精子が自力で子宮までたどり着けるかに大きく関係します。
この他にも、患者の状態によって検査が追加されます。
男性に次のような不妊の原因がある場合、
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)
精巣やその周辺に静脈瘤があること
無精子症
- 精子は作られているのに精管が詰まって出てこられない
- 睾丸の機能が低く、精巣内で作られる精子の数が非常に少ない
それぞれ手術や投薬を行い、精子の状態の改善をはかります。
夫が非協力なのはなぜ?
不妊症は夫と妻どちらかの問題ではなく、夫婦2人の問題です。
WHO(世界保健機関)によると、不妊原因のうち、「男性のみ」が24%。男女双方に原因がある場合を加えると、約半分のケースで男性が関係している。
このように、不妊症とされる夫婦の不妊の原因は、約半数が夫婦ともになんらかの原因を持っているとされています。
つまり、男性にも治療に協力的でいてもらわないと不妊治療は進みません。
しかし夫側があまり不妊治療に協力的ではない、ということはよく聞く話ですよね。
なぜ不妊治療に協力的になれない男性が多いのでしょうか。
そもそも焦っていない
なぜ不妊になるのか、逆にどういった仕組みとタイミングで妊娠に至るのか、詳しい知識がない男性が多いかと思います。
その場合、正常な夫婦生活を送っているならいつか自然に妊娠出来ると思っているので、女性と比べるとあまり焦りがありません。
20代半ばをピークに女性の年齢が上がれば上がるほど自然妊娠率は下がり、とくに35歳を過ぎると約50パーセントまで確率が下がります。
また、流産や死産の確率は上がるので、年齢を重ねると子供を産むのが難しくなります。
女性の場合は、妊娠を望むなら排卵日を自分で計算できますし、年齢のリミットがあることを知っている方も多いかと思います。
しかし、不妊の原因の約半数が男性側にもあることを、どれだけの男性が知っているでしょうか。
Hさんの旦那さんは治療を始めたころ、
全くと言っていいほど、不妊治療においてどのようなデータがあって、実際の治療がどういったものなのかわかっていませんでした。
そこで夫婦で休みを合わせて通院するようにして、
なぜ不妊になるのか、どういった治療をどれくらいの頻度でするのかなど、医師に説明してもらいました。
すると旦那さんから医師に質問をしたり、夫婦間でなんとなく話しづらかった不妊治療の話をよくするようになったそうです。
医師等の第三者から説明してもらって、男性側に正しい知識を身につけてもらうと、きっとあなたの力強い味方になってくれると思います。
検査に抵抗がある
通常、不妊治療の検査は夫婦ともに不妊治療専門のクリニックや婦人科で行います。
しかし男性にとっては、婦人科だと周りが女性ばかりで内装や設備等女性向けのところが多く、なかなか行きにくいですよね。
ただでさえ検査結果によっては自分がショックを受けるかもしれないのに、そんな環境の病院に行くのに気が進まないのは当然です。
でも実は、泌尿器科でも男性不妊の検査が出来ることをご存知でしょうか?
また、男性不妊外来がある大きな病院もあります。
こういった病院のほうが、男性側も検査を受けるハードルが下がるかと思います。
ぜひ、夫婦でお二人に合った病院を探してみてくださいね。
女性主体で進めて欲しいと思っている
不妊治療は、女性の方が通院する回数が多く、痛みを伴う検査や治療、薬の副作用も多くあります。
そのため、男性側はあまり口を出さずに女性主体で治療を進めた方が良いと考えていることが多いようです。
実際Hさんの旦那さんも、痛い思いや通院のために時間をやりくりするのはHさんなので、本人がやりたいように見守っていようと思っていたそうです。
しかし、不妊治療は2人共通の問題です。
最終的にどの治療をするかはHさんが決定するとしても、妊娠に向けての2人の意思のすり合わせは必要です。
例えば「どれくらいの期間で治療するか」すり合わせが出来ていなければ、
「こんなに長く治療してしまっているけど、もうやめたら?と思われてないかな」
などと治療に迷いが出てしまいますよね。
Hさん夫婦は話し合い、どのように子供を授かりたいのか、どれくらいの期間治療を続けたいのか等、納得してその後の治療方針を決めることができたそうです。
不妊治療で夫の理解を得られる3つの方法
不妊治療は男女間で意識の違いがあったり、なかなかおおっぴらに話しづらいデリケートな問題なので、夫婦間でもなあなあに進めてしまいがちです。
しかしデリケートな問題だからこそ、2人の間できちんと理解し合い治療していくことが大切です。
ここでは、不妊治療をうまく進めるために、夫の理解を得られる3つの方法をみていきましょう。
辛い気持ちをしっかり伝える
男性側が非協力な状態で不妊治療を続けていくと、きっとあなたは
「2人の子供のことなのに、どうしてそんなに協力してくれないの⁉︎」
と思いますよね。
でも実は、あなたがどうしてそんなにイライラしているのか、男性側はわかっていない場合もあるんです。
だからこそ、あなたがなぜイライラしてしまって、何が辛くて悲しいのかをきちんと伝えることが大切です。
不妊治療には年齢のリミットがあり、今はたくさんの夫婦が不妊治療をしていて決して珍しくはないことなど、データや数値で見てもらいましょう。
客観的なデータを見ることで、現実味を持って不妊治療に向き合えるようになるかもしれませんね。
また、
- 使う薬が多く複雑で副作用もたくさんあること
- 毎月生理が来てしまうのが本当に悲しいこと
- 親や友人からのプレッシャーがあること
など、あなたが辛いと感じていることもしっかり伝えましょう。
Hさんは不妊治療の中で、毎月生理が来てしまうことが特に辛かったそうです。
「あなたは妊娠できなかったので、女性として失格ですよ」
と毎月突きつけられているようで、生理予定日のあたりはいつもナーバスになっていました。
しかし旦那さんはHさんがイライラしていることはわかっても、なぜなのかはいまいちピンときていませんでした。
そこでHさんは、生理がくるとまた治療を頑張らなくてはいけないことや、いつ2人の赤ちゃんに会えるのかと待ちわびてしまうことが辛いと伝えてみました。
やっとHさんのイライラの理由がわかった旦那さんは、
生理予定日付近はHさんを外に連れ出し、いろんなところへ遊びに連れて行ってくれるようになったそうです。
お陰で2人ともリラックスして治療にのぞめるようになりました。
期限を決める
不妊治療は、ゴールが見えないことが辛い、とよく言われます。
いつ妊娠に至るか誰にもわからず、経済的にも精神的にもいつまで持ち堪えられるかわからないからです。
それなら、初めからいつまで治療を続けるのか期限を決めるのはどうでしょうか。
夫婦であらかじめ期限を決めれば、治療のための貯金はこれくらい必要で、治療が終わったら旅行に行く計画を立てよう!などとはっきりとした目標ができますよね。
Hさん夫婦は、Hさんが35歳になるまで治療を続けることを決めました。
それまでに妊娠出来れば、それはもちろん嬉しいことですし、
もし出来なくても、その後は2人でゆっくり暮らすことにしたのです。
期限を決めてから、旦那さんは貯金を以前にも増して頑張るようになりました。
目的は治療にあてるためですが、途中で妊娠出来たら赤ちゃんのために使うということで、張り切っているそうです。
2人の時間を大切にする
赤ちゃんが出来ても出来なくても、夫婦の生活は続いていきますよね。
不妊治療を頑張るあまり、お互いのことをないがしろにしてしまっていないでしょうか?
ぜひ赤ちゃんをお迎えする前に、たくさん2人きりの時間を過ごしましょう。
きっとこの期間の絆が、子育てにも、今後の夫婦生活にも役立つはずです。
Hさん夫婦は、2人でたくさん食事や旅行に出かけました。
治療の気分転換にもなりますし、何より2人でいるのも楽しいよね、と再確認出来ました。
治療の結果がどうなるかはわかりませんが、2人の時間を多く取ることで、不妊治療の話もたくさん出来るようになりました。
夫婦間で、温度差なく治療に向き合えるようになったことが一番の収穫だったそうです。
まとめ
不妊治療は、男女間で負担の種類や大きさが違うところがたくさんあります。
そのため、なかなかお互いに辛さを理解できないのが実情です。
もしあなたが夫婦間で治療に対する熱量が違って辛いと感じたら、
- 辛い気持ちを伝える
- 治療の期限を決める
- 2人の時間を大切にする
この3つの方法を試してみてください。
きっと、互いにすれ違っていた部分をすり合わせて、同じ目標に向かって進んでいけるはずです。
治療中は精神的にも身体的にも、そして経済的にも大変なことがたくさんあります。
しかし夫婦2人でいつも同じ方向を向いていられれば、これほど心強い味方はいないですよね。
この記事を読んで、あなたが少しでもラクな気持ちで治療に向き合うことが出来たら嬉しいです。