
「子供がいつも室内を走り回るから、苦情を言われないか心配になる」
こういった悩みは親御さんには付き物ですね。
普段から気を使ってはいるものの、元気一杯の子供に口でいってもなかなか聞いてはくれません。
でも、だからといって、そういった音を「仕方ない」と諦めていると、時には事件に発展するケースもあります。
ですから、そうならないためにも、きちんとした対応策を身につけておく必要があります。
対処法を覚えて、周囲との良い関係を保ちましょう。
騒音は何故起こる?
まず、騒音トラブルの解決法を説明するために、騒音は何故おこるのか、についてのお話から始めます。
音が周囲に伝わるメカニズム
音には空気伝播音と固体伝播音という二つの種類があり、伝わり方はそれぞれ異なります。
空気伝播音は、空気を介して周囲に伝えられる音で、テレビやスピーカー等の音がこれに該当します。
固体伝播音は、床や壁を振動させた際に発生する振動が音となって伝わってくるもので、足音や家具を移動した際に出る音が該当します。
空気伝搬音は防ぎ易く、個体伝搬音は防ぎにくい
空気伝播音は空気を介して音が伝わるので、壁が厚かったり、壁に吸音材が入っていると、音が減退するので、伝わりにくくなります。
一方、固体伝播音は、振動を介して伝わります。
ですから、壁や床を厚くしても防ぐのが難しく、この音の被害に悩まされるケースも多くあります。
床に防振ゴムを施工するなどの対策法があるものの、それでも伝わってしまう事も多いのが現状です。
騒音被害を増長する太鼓現象
壁や床の空洞部で音が増幅され、音が大きくなってしまう、太鼓現象も騒音被害を増やす原因になります。
太鼓は、真ん中の空洞を介して、叩いた側の反対側から大きな音を出し、周囲に聞かせる楽器です。
音が音源(叩いた所)から太鼓の空洞を介して伝わる時、音を広げるので、反対側から出る時には、叩いた側よりも大きな音になります。
この太鼓の内部で起きているのと同じ現象が、住宅の壁内部で発生する事を、太鼓現象といいます。
壁の中を中空にする事により、壁の強度を保ちつつ軽く出来たり、断熱効果をアップさせるメリットがあります。
しかし、太鼓現象を発生させ易くなりますから、防音の面ではデメリットとなります。
どんな音が騒音トラブルの原因になるの?

下記の様な音は、周囲とのトラブルにつながり易いので注意が必要です。
- ペットの鳴き声
- テレビ、スピーカーの大きな音
- 足音 (子供は特に注意が必要)
- 子供を叱る親の声
- 話し声
- 洗濯機の音
- 家具の移動音 (椅子の移動時や模様替えの際の音等)
- 掃除機の音
- 楽器の演奏音
- 目覚まし時計の音
- 扉の開閉音
- 固定電話の呼出し音
尚、環境省が騒音の目安として以下の数値を示しています。
- 日中(AM6時~PM10時) 55db(デシベル)
- 夜間(PM10時~AM6時) 45db(デシベル)
日常会話の際に出る音の大きさは、約50~61dbと言われます。
ですから、上記基準に照らし合わせて考えれば、夜間の会話には注意が必要だと分かりますね。
騒音トラブル防止法
では、騒音トラブルを防ぐには、どういった対策をすれば良いかを説明します。
トラブル防止のポイントは、以下です。
- テレビ、ステレオスピーカーの音量を調節する
- 掃除・洗濯はなるべく日中に行う
- 子供は早く寝かしつける
- 子供の叱り方に注意する
- 部屋のレイアウトを変える
- 防音材を天井や壁、窓に貼る
- 冷蔵庫、洗濯機等の家電に防音処置をする
- 防音対策を床面に施す
- 扉に防音措置を施す
- 普段から近所とコミュニケーションをとっておく
テレビ、ステレオスピーカーの音量を調節する
テレビ、ステレオスピーカーは大きな音を発生させるので、必要以上に音量を上げない事が重要です。
又、スピーカーは空気伝搬音だけでなく、音を発生する際の振動が個体伝搬音としても伝わるので、特に注意する必要があります。
東京都環境局のデータによると、テレビは約57~72db、スピーカーは70~86db程度の音を発するそうです。
ですから、このデータから、音を調節しないと日中でも騒音になる事が分かります。
掃除・洗濯はなるべく日中に行う

掃除や洗濯の際に出る音は、想像以上に大きく、周囲にとってはストレスになる場合も多くあります。
ですから、洗濯や掃除は極力日中に行う様にした方が良いでしょう。
又、周囲がいない時間が分かっている場合は、その時間に合わせて洗濯や掃除をすれば、苦情を言われにくくなります。
楽器等の演奏も同様に、時間帯を考えて行う様にしましょう。
音を出す行動はなるべく日中に行う、が基本です。
子供は早く寝かしつける
子供の足音や騒ぐ声が原因となって、トラブルを起こすケースは多いです。
特に周囲が落ち着いてくる夜間は音が響きますから、音をあまり意識しない子供の行動は、特に目立ってしまいます。
子供に規則正しい生活をさせるためにも、見たい番組は録画して日中に見せる等して、子供を早く寝かせる様にしましょう。
子供の叱り方に注意する
子供を叱る親の声がうるさいといった苦情も多く見受けられます。
とはいえ、何度言っても聞いてくれないと、イライラして怒鳴ってしまう事もあるでしょう。
でも、そこで怒鳴ったからといって、子供は言う通りにしてくれるとは限りません。
子供に言うことを聞いてもらうには、説得と誘導を行うのが一番です。
子供の説得方法
説得するには、まず、子供の目を見て、最初に気持ちを肯定してあげてから、叱る理由をしっかり説明して納得させる必要があります。
その際、子供の意見や行動を確かめ、それに合った代替案を出すのも良い方法です。
又、改善したら褒めてあげる事も忘れず行う様にしましょう。
この時、以下の点に注意が必要です。
- 人格を否定しない
- 感情的に怒鳴らない
- 他の子と比べない
- 長々と言いつづけない
- 手をあげない
子供を誘導する方法
誘導するには、子供の興味を惹きつけるのが最善の方法です。
例えば、走り回る子供に、入念に防音措置をとった部屋へ行かせて、そこでゲームをする様に伝えます。
子供はゲームが好きですから、喜んで部屋に向かいます。
最近は体を動かしながら行うゲームも多くありますから、上手く活用すると良いでしょう。
又、習字等の静かに出来る事に対しても興味を持つ子なら、それをさせている間は大人しくしてくれます。
説得、誘導どちらの方法においても、子供の個性を把握し、関心を引き出す方法で行うのが肝心です。
部屋のレイアウトを変える
隣の部屋との壁際に家具を配置する方法も有効です。
書棚やタンス等を壁との間に挟む事で、それらが音を吸収してくれるので、防音の効果が期待出来ます。
但し、レイアウト変更に伴う音が発生しますから、移動時には注意しましょう。
子供が走り回りにくい配置を考える事も重要です。
テーブルやソファの回りをぐるぐる走り回ったりしていませんか?
テーブル等が中央にあり周囲に何もないと、走り回りますから、そういった隙間を物を置き塞ぐ、等の工夫が大事です。
防音材を天井や壁、窓に貼る
天井や壁、窓に防音効果のある材料を貼って音を軽減しましょう。
賃貸マンションに住んでいる場合、退去時に原状回復する必要がありますから、その事も考慮にいれて対策をする必要があります。
防音材が貼れない場合、厚手の布を壁に貼るだけでも十分効果が期待出来ます。
冷蔵庫、洗濯機等の家電に防音処置をする
冷蔵庫や洗濯機等の家電はスピーカー同様、振動による固体伝播音を発生します。
これを減らすには、家電の足(下側)に防振ゴムや防音シートを設置するのが有効策です。
これを行うだけでも、かなり音を軽減出来ますから、可能な限り設置しておきましょう。
防音対策を床面に施す
足元の防音は必須です。
特にフローリングの床は音を伝え易いので、カーペットや防音マットで対策を施しておきましょう。
防音マットの中には、10mm以上の厚みの物もあるので、なるべくそういった厚い物を選ぶ方が良いです。
又、厚みだけでなく、重みも必要です。
畳のある部屋の場合、畳が音を吸収するので、子供部屋にするのに最適です。
部屋の割り振りは、周囲への音の影響を大きく変えますから、どの部屋をどの用途に使うか考え、上手く割り振るようにしましょう。
静床ライトという、特殊3層構造をした商品は他のマットより防音性が高いです。
尚、ジョイントマットや他のマットの上に敷くと、さらに効果がアップしますので、他のマットとの併用をおすすめします。
扉に防音措置を施す
子供などは力加減が出来にくいので、思いっきり閉めてしまい、大きな音を出してしまう場合もあります。
そういった際に役立つのが、ドアクローザーや防音テープです。
ドアクローザーは、開き戸の閉じる速度を変えられるグッズで、室内のドアに後付けする事も出来ます。
玄関の扉から手を離すと、ゆっくりと閉まっていきますね。
これも、ドアクローザーが速度を調節してくれているおかげです。
この装置を、室内のドアにも取り付けようという訳です。
左側に丁番が付いている左吊元と、右に付いている右吊元があるので、ドアに応じて選ぶ様にします。
防音テープも、手軽に張れるので、おすすめです。
襖等の引き戸にはドアクローザーを付けられませんから、防音の要になります。
色々な厚さの物があるので、お部屋の状況も考えた上で選ぶと良いでしょう。
スガツネ工業 ラプコンドアダンパー 左吊元用 ダークブラウン
普段から近所とコミュニケーションをとっておく
音の感じ方は人それぞれです。
自分では大した事は無いと思っていても、被害者にとっては耐えがたい苦痛である場合も多くあります。
又、同じ音でも、部屋の住人に対する感情次第で我慢出来るか、出来ないかが変わってきます。
皆さんも普段から仲良くしている人と、嫌味ばかり言ってくる人では、同じ態度は取れないと思います。
相手にとってもそれは同じです。
ですから、普段からコミュニケーションをとるよう心がけ、周囲の理解に努めるのが、トラブル防止の最善策です。
そのために、お祭りや保護者会等の、人の集まるイベントに日頃から積極的に参加しておく事を推奨します。
騒音トラブルを防ぎやすい部屋の選び方
入居前なら、部屋選びの段階から騒音トラブルが起きにくいか、対策がし易いかを前もって調べておく事が出来ます。
騒音トラブル予防のために、入居前に下記ポイントを確認しておきましょう。
- マンションの防音能力を確認する
- 壁内部に中空があるか調べる
- 近隣の部屋の間取りを調べる
- 立地や周辺状況を確認する
- 条件を変え複数回確認を行う
- リノベーション可能な物件を選ぶ
- 管理会社の質をチェックする
マンションの防音能力を確認する
現在のマンションは木造家屋等と比べ、遮音性は高くなっているものの、壁の厚さ等の防音性能はマンション毎に異なります。
ですから、入居前にしっかり確認しておく必要があります。
壁の厚さや、床や天井が二重構造になっているか、等の基本的な部分は漏らさずチェックしましょう。
壁材に防音材が施行されているかも重要なポイントです。
壁内部に中空があるか調べる
壁内部に中空があると、上記の太鼓現象が起こり易くなります。
特に注意したいのは、多くの場合、部屋毎を仕切る壁と、外壁に面した壁とでは構造が違う点です。
外壁にだけ中空構造がある建物も存在しますから、角部屋の場合注意が必要です。
壁や床に中空があるかは、専門家に図面を見てもらえば分かります。
なので、部屋選びの際には仲介業者に伝えて、図面を取り寄せてもらい、専門家の意見を聞いておく方が良いでしょう。
近隣の部屋の間取りを調べる
近隣の間取りを調べておく事も重要です。
例えば、自室のリビングが隣家の寝室のすぐ横にあったら、自室のテレビの音等が隣に伝わり易くなります。
そうなると、「寝付けない」といった苦情を招く引き金になりかねません。
ですから、トラブルが起きやすそうな物件を避けるには、周囲の間取りの把握は必須です。
あらかじめ管理会社や大家さんを通じて確認しておきましょう。
分譲マンションの場合は特に注意
分譲の場合、聞き込みをしてもトラブルの情報が聞けない事も多くあります。
部屋のオーナーは可能な限り高値で売りたいと考えます。
又、近隣住民も自分のマンションに騒音被害の風評が立つことを嫌いますから、情報を教えてくれるとは限りません。
ですから、購入前には必ず、専門家に図面や資料を確認してもらう様にしましょう。
立地や周辺状況を確認する
マンションの室内確認だけではなく、外部環境の確認も大事です。
騒音トラブルの原因が内部にあるとは限りません。
交通量の多い大通り沿いや、線路が近くを通っている場所は、外部の音に悩まされる可能性が高くなります。
マンション1階の部屋等の場合、近隣の民家から苦情を言われる事もありますから、周辺のチェックも忘れず行いましょう。
条件を変え複数回確認を行う
最初に見に行った時は問題なさそうに感じても、条件を変えると問題点が見えてくる場合もあります。
特に、平日と休日、日中と夜間ではうける印象も違います。
日中はあまり音が目立たなくても、夜間には強く響く様に感じる事も多くあります。
そういった物件は、夜間の音が原因でトラブルを招く恐れもあります。
なので、確認の際には、シチュエーションを変えて行くのが最良です。
リノベーション可能な物件を選ぶ
リノベーションとは、完成している建物に対して改装工事を施し、機能や価値を付け加える事をいいます。
対して、壊れた部分を修復して元に戻すのをリフォームといいます。
特に、中古マンションの場合、リノベーションするかしないかで、防音性が大きく変わる部屋もあります。
リノベーションが可能かどうかは、マンションにより異なりますから、契約前に確認しておきましょう。
管理会社の質をチェックする
管理会社毎にクレームへの対応力やサービスの質は異なります。
いい加減な管理会社だと、騒音トラブルの相談をしても適切に対応してもらえない場合もあります。
管理会社の質を推測するには、共用部分や設備の状態を確認するのが良い方法です。
いい加減な会社だと、人目につかない場所の設備がボロボロになっている場合もあります。
物件をチェックする際は、隅々まで丁寧に管理が行き届いているか確かめておきましょう。
騒音でトラブルが起こったら
気を付けていても、トラブルが起こる場合もあります。
トラブルが起きた時は、まず、冷静に対処する事です。
対処法は、以下です。
- いきなり直談判せず、仲介してもらう
- 一時的な転居などで相手と距離をおく
- 騒音を記録する
- 発生原因を特定する
いきなり直談判せず、仲介してもらう
いきなり当事者同士のみで話し合おうとすると、お互い感情的になり、険悪な関係になる事も多くあります。
ですから、マンション管理会社や管理組合等の、第三者に仲介してもらうと良いです。
もし、相手に直接苦情を言われた時は、とにかくまず相手の話を聞き、落ち着いて対処しましょう。
たとえ相手が理不尽な要求を突きつけてきても、決して感情的にならず、その場をやり過ごします。
そして、上記にもある通り、第三者を介して話が出来るよう、組合等に相談しましょう。
感情的になった方が負け、という意識で行動する事が大切です。
どうしてもという場合、最終手段として、裁判で決着をつける方法もあります。
しかし、その後に大きなしこりを残しますから、出来る限り避けるべきでしょう。
発生原因を特定する
音は周囲からも回り込むので、発生原因が意識していた方と違う場所にあるケースも散見されます。
ですから、まず音の原因がどこにあるのかを把握する事が必要です。
自分が原因でないのに、相手から「この人が原因だ」と言われても対処出来ませんからね。
一時的な転居などで相手と距離をおく
隣人同士だと、たとえトラブルが起きても、頻繁に顔を合わせざるを得ませんから、距離をおくのが難しいです。
そうなると、感情を落ち着かせる時間が取れないので、より感情的になっていきやすくなります。
感情の衝突をさけるために、トラブル時は一時的に転居する等の対策を講ずるのも一つの方法です。
顔を合わせない時間を作る事が出来れば、お互い感情を落ち着かせて冷静に対処でき、問題が解決する場合もあります。
騒音を記録する
実際にどれだけ音が出ているかを把握する上で、騒音計が役立ちます。
音の大きさに関しては、騒音規制法という法律で基準が決められており、これに基づき環境省が数値を定めています。
騒音計を使って測った数値をこの基準値に照らし合わせれば、本当に騒音なのかを客観視出来ます。
又、苦情を言われた際にも、数値で示す事で説得出来る相手もいます。
最近は無料のスマホ用計測アプリも出ていますから、前もってインストールしておくと良いでしょう。
被害者側の場合
自分が被害者側の場合も、上記の加害者側の時と同様に対処しましょう。
第三者に仲介してもらう方が良いです。
例えば、管理会社に連絡し、張り紙で建物全体に対し注意喚起をしてもらうだけでも、効果が出る場合もあります。
発生原因の追及も忘れず行いましょう。
思い込みで「この人の出した音のせいで迷惑している」と考えてはいけません。
音量のチェックも必要です。
神経質になりすぎて、過剰反応し被害を受けていると思ってしまっているのかもしれません。
しっかり確認した上で、冷静に対応策を考える様にしましょう。
まとめ
上記で説明した騒音トラブル予防のポイントを、再度おさらいしておきましょう。
- テレビ、ステレオスピーカーの音量を調節する
- 掃除・洗濯はなるべく日中に行う
- 子供は早く寝かしつける
- 部屋のレイアウトを変える
- 防音材を天井や壁、窓に貼る
- 冷蔵庫、洗濯機等の家電に防音処置をする
- 防音対策を床面に施す
- 扉に防音措置を施す
- 普段から近所とコミュニケーションをとっておく
ちょっとした認識の違いから、トラブルに発展するケースが少なくありません。
トラブルを予防する一番のポイントは、相手を理解し、常に思いやりの心を持つ事です。
あなたが周囲の人と良い関係を築ける事を願っています。