「旅行が好きだけど、乗り物に乗るとすぐ酔ってしまうから、移動が憂鬱」
移動中の景色の移り変わりや会話も旅行の醍醐味だと思いますし、移動中の乗り物酔いでの不調を後に引きずってしまうと、旅行を100%楽しめないですよね。
とはいえ、薬を飲んでも酔ってしまうと、仕方ないと諦めてしまうのも無理もないと思います。
今回は、諦め気味な乗り物酔いに対してを少しでも前向きに対応できるように、乗り物酔いの原因と防ぐ方法をお伝えします。
乗り物酔いは何故起こる?
まず、何故乗り物酔いをしてしまうのか、について説明します。
人体には平衡感覚が備わっており、これによって常にバランスを保とうとします。
乗り物酔いは、その平衡感覚の異常によって起こります。
ですから、乗り物酔いを説明するにあたって、平衡感覚についてのお話から始めさせて頂きます。
人はどうやって平衡感覚を保っているの?
平衡感覚の調整は小脳が司っており、耳の奥に存在する三半規管という部位からの情報を元にして、随時行われています。
三半規管には常にリンパ液が溜まっており、体が傾くと耳の内部のリンパ液も動く仕組みになっています。
ですから、体が傾くと耳からリンパ液の傾きの情報が小脳に伝わりますので、「体が傾いた」と認識出来る訳です。
乗り物酔いが起こる理由
上記の機能が正常に働いている間は、体に異常は起きません。
しかし、乗り物に乗るとリンパ液は常に揺さぶられて振動し続けます。
そうなると、小脳に常に不規則な刺激が常時加わりますから、平衡感覚に異常を起こし易くなります。
さらに、体があまり動いていないのに、目の前の景色が大きく変化する事も、脳の異常に拍車をかけてきます。
脳は聴覚、筋肉等の様々な情報を検知し、体はあまり動いていないと認識します。
しかしながら、乗り物はどんどん前へ進みますから、それに伴い景色もどんどん変化していきます。
すると、体の位置情報と視覚情報との間にズレが生じ、脳が混乱します。
結果、脳が正常に処理出来なくなって平衡感覚が損なわれ、自律神経に異常をきたし酔ってしまう訳です。
どんな時に酔いやすい?
乗り物酔いが起こりやすいのは、以下の時です。
- 体調不良の時 (風邪、疲労、睡眠不足等)
- 空腹時、満腹時
- 読書時や、ゲームをしている時 (眼球が通常時と異なる動きをするので、平衡感覚を失い易くなる)
- 荒い運転の時
- 車内に不快な臭いがある時
- 窮屈な姿勢(又は服装)で乗車している時
- 酔うかもしれないと思っている時 (不安等の心理的な要因で引き起こす)
酔いやすい人っているの?
乗り物酔いは体験を重ねる事である程度軽減出来ます。
ですから、乗り物に乗り慣れない子供等は酔い易いと言えます。
一般的には、小学校へ入る頃から乗り物酔いが起こり初め、高学年〜中学生の時に、特に増えると言われます。
その後、大人になるにつれ、減ってきますが、乗り物に慣れていない場合、成人でも酔いを起こします。
酔うとどういう症状が出るの?
酔った場合によく起こる症状を、下記に記載します。
- 生あくびや生唾が出る
- 頭痛や動機、めまいが起こる
- 冷や汗が出たり、顔色が蒼白になる
- 吐き気、嘔吐、胃の不快感が出る
- 手足にしびれを感じる
どうすれば酔いを防げるの?
では、酔いを防ぐにはどうすれば良いかについて説明します。
酔いを防ぐポイントは、以下です。
- 満腹や空腹を避ける
- 体調を万全にする
- 揺れの少ない場所に座る
- 頭を揺らさない様に努める
- 体を締め付ける服を着ない
- 進行方向を見る
- 目を閉じる (視覚情報を遮る)
- 換気をする
- 適度に休憩を挟む
- 自己暗示をかけ酔いにくくする
- 酔い止め薬を飲む
それでは、順に詳しく説明します。
満腹や空腹を避ける
空腹時や満腹時は胃粘膜が刺激されるので、ストレスを感じ易くなり、吐き気や嘔吐を起こし易くなります。
ですから、乗車前には軽く食事を済ますと良いでしょう。
ご飯やパン等の、胃に負担の掛からない物を選ぶのが最善です。
柑橘類は、胃酸の分泌を促すので、避ける事を推奨します。
又、飴やキャンディ、ミント味のガムも良いですね。
血糖値を上げて脳を目覚めさせると同時に、口の中をさっぱりさせてくれるので、酔い止めに効果があります。
体調を万全にする
上記でもお伝えした様に、体調不良の時は酔いを起こし易くなりますから、事前に体調を整えておきましょう。
睡眠不足の状態だと特に酔い易いので、しっかり睡眠をとった上で乗るべきです。
揺れの少ない場所に座る
旅行バス等に乗る際は、最も揺れの少ない前輪と後輪の間となる、中央付近の席の中で、前方が見える場所に座ります。
電車での場合も同様に、各車両の中央付近が最も揺れにくい位置ですから、この付近に座り、可能ならば前方を向きます。
自家用車の場合、車の振動を予測出来るので、助手席の位置に座ると酔いにくくなります。
船舶の場合は、中央の下層部分が一番揺れにくいです。
頭を揺らさない様に努める
当然ですが、頭部が揺れると酔い易くなります。
下を見続けたりするのはあまり良くありません。
首が揺れ易くなるからです。
あごを引き、頭部を揺らさない様にして内耳のリンパ液の動きを抑える事で、酔いを起こしにくくなります。
シートのリクライニングを倒して頭をしっかりと固定するのも、揺れの影響を防ぐ上で効果があります。
体を締め付ける服を着ない
体をきつく締め付ける服装は、血行を悪くし、ストレスを増長させ、酔い易くさせます。
ですから、なるべくゆったりとした服を着るよう心がけましょう。
靴も、つま先がきつくなっているハイヒールより、スニーカーの様なラフな物の方が良いです。
進行方向を見る
進行方向の中央地点を見る事で、最も視覚情報の変化が少なくなりますから、酔いにくくなります。
又、乗り物の動きを予測し易くなる点も大きく関係します。
進行方向が見えない時は、遠くの景色を眺めると良いでしょう。
同時に乗り物の動きに合わせ、体を傾けたりすれば、視覚情報と位置情報が一致し易くなりますので、より効果的です。
目を閉じる (視覚情報を遮る)
酔いを起こす原因となる、情報のズレをなくすために視覚情報を遮る、といった方法も有効です。
この時、冷たいタオルを目に当てる等すると、より効果的があります。
又、目を閉じることで、心身のリラックスにもなります。
眠気が出るなら、そのまま眠ってもかまいません。
酔いを防ごうと目をそらす目的で読書、携帯ゲーム、スマホ操作をすると逆効果となり、酔いを誘発するので避けましょう。
換気をする
車内に不快な臭いがあると、吐き気を催し易くなったりして、酔いを誘発してしまいます。
食べかすやゴミなどは、袋に入れてしっかり縛る等して片付けると同時に、定期的に窓を開けて換気する様にしましょう。
適度に休憩を挟む
定期的に休憩を挟み、脳の負担を減らせば異常を起こしにくくなります。
休憩時は車から降りてリフレッシュする様に努めましょう。
道路沿い等の車の多い場所から離れるのがポイントになります。
道路沿いは排気ガスの影響で不快を感じ易くなるからです。
自己暗示をかけ酔いにくくする
不安な気持ちは、自律神経の乱れを誘発し、酔い易くします。
ですから、「酔ってしまうかも」といった悪い自己暗示をかけない様にする事も必要です。
逆に、「これだけ対策しているんだから、大丈夫」とプラスになる暗示をかけると良いでしょう。
又、酔い易い人への周囲の人からの配慮も大切です。
酔い易い人は、周囲への迷惑を気にかけます。
そういった緊張が、より自己暗示をかけ易い条件を作り、酔いを誘発します。
ですから、周囲の人は、会話をしたり、その人が好きは曲を流したりして、リラックスさせてあげると良いですね。
皆で楽しくおしゃべりしながら過ごした時間は、良い思い出にもなるはずですよ。
酔い止め薬を飲む
乗車する前に、酔い止めの薬を飲んでおけば、大きな効果を得られます。
酔い止め薬には、自律神経を整えたり、過度な胃腸の働きを抑えたりするので、吐き気やめまいを防ぐ効果があります。
また、上記にもある心理的な暗示の効果も期待出来ます。
「薬を飲んでるし酔わないはず」と暗示をかければ、それだけでも大分酔いにくくなります。
酔いにくくするためのトレーニング法
乗り物酔いしにくくするには、何をすれば良いのでしょうか。
ここでは、簡単に出来る、乗り物酔いに強くなるトレーニング方法をご紹介します。
訓練1.頭を振る
少し離れた場所の動かない物に視線を向けながら、次の動作を一日数回繰り返します。
- 頭を左右に振る
- 前後に振る
- 左右に傾ける
訓練2.目を動かす
少し離れた場所にある、2つの点を交互に見る様にします。
左右2点、上下2点を決め、頭を動かさずに眼球だけでそれぞれ左右、上下と2点間を交互に往復させます。
これを1回十数往復、一日数回繰り返して行いましょう。
訓練3.体の向きを変える
下記の動作を各十数往復、1日数回反復します。
- 仰向けと起きた状態を繰り返す
- 左右に寝返る
- 椅子に座ったり立ったりする
訓練4.足を動かす
足を閉じたまま立ち、片側の足のつま先に、もう片側の足のかかと部分ををつける動作を繰り返し行います。
これを目を開いた時と閉じた時で、左右の足毎に各数分づつ、一日数回行います。
訓練5.後ろ向きで歩く
障害物が無い場所で、ゆっくり後ろ向きに歩く動作を繰り返す事で、三半規管が鍛えられます。
この時、壁、物に触れない方が良い効果をもたらします。
訓練6.目を閉じて歩く
上記同様、障害物が無い場所で目を閉じたまま、壁、物に触れずに歩きます。
慣れてきたら、これに上記を加えて後ろ向きで歩くとより効果が上がります。
訓練7.椅子を回転させる
回転する椅子を用いて、左右両方に動かします。
まっすぐ座り、そのままの姿勢で回しましょう。
慣れたらスピードを上げていきます。
但しこの方法は、椅子が倒れない程度に止めないと転倒しますから注意が必要です。
それでも酔ってしまったら
上記の対策をしていても、酔ってしまう場合もあると思います。
その場合は、以下の方法を試してみましょう。
- 酔いに効くツボを押す
- アロマオイルを利用する
- 乗り物から降りる
- 遠くの景色を見る
- 横になる
- 吐いて楽になる
酔いに効くツボを押す
酔いを軽減するツボがありますから、そこを押してみるのも一つの方法です。
内関(ないかん)は、手のひらを上にし、手と手首の境の中央から指3本分肘側に寄った場所にあります。
胃の不快感を和らげたり、平衡感覚の調整機能に作用するので、酔い軽減の効果が期待出来ます。
内関の裏側に位置する外関(がいかん)も、頭痛等の軽減効果がありますので、試してみる価値はあります。
アロマオイルを利用する
自分の好きな香りを嗅ぐのも、酔い止めに効果があります。
アロマオイルをティッシュやハンカチに垂らして嗅げば、気分も落ち着き、かなり楽になります。
ミントやフルーツ系のさっぱりした香りが一番おすすめです。
尚、知人のSさんも、「試しにミントの香りを嗅いでみたら効果があった」と言っていました。
お気に入りの香りの物をバッグに入れ、持っていくと良いでしょう。
乗り物から降りる
酔ってしまった場合は、乗り物から降りるのが最善の方法です。
自家用車での移動中等で降りられる場合は、気分が落ち着つくまで外で休憩すると良いでしょう。
予防法でもお伝えしましたが、休憩の際は車の多い場所から離れて行う様にします。
遠くの景色を見る
旅行バスで高速を移動している場合等、すぐに降りられない時は、窓を開けなるべく遠くの景色を眺めるのが良い方法です。
この時、視野を広くとるのがポイントです。
どこか1点を集中して眺めるより、ぼーっとして全体を眺める方が、リラックス出来ます。
横になる
可能なら、シートを倒して横になる方が良いでしょう。
頭を動かさないように手持ちのバッグ等で固定すると尚良いです。
又、なるべく目閉じるか、遠くの景色を見る様にします。
視界が大きく変わる近くの景色を見てはいけません。
吐いて楽になる
吐き気がある時は、無理に我慢せず吐く方が落ち着きます。
嘔吐した場合に備え、ビニール袋等は常に持参すると良いでしょう。
吐いた後は換気をし、可能ならば、なるべく早く車から降りてうがいをすれば、かなり楽になります。
その後は、安静にするように努めましょう。
まとめ
ここまで説明してきた予防についての方法を、最後にもう一度おさらいしておきます。
- 満腹や空腹を避ける
- 体調を万全にする
- 揺れの少ない場所に座る
- 頭を揺らさない様に努める
- 体を締め付ける服を着ない
- 進行方向を見る
- 目を閉じる (視覚情報を遮る)
- 換気をする
- 適度に休憩を挟む
- 自己暗示をかけ酔いにくくする
- 酔い止め薬を飲む
乗り物は時として酔いを起こし気分を害すきっかけになります。
しかし、乗り物は人の移動を手助けし、見たかった物や、やりたかった事を出来る場所へと連れていってもくれます。
対処法を身に付け、ゆったりした気持ちで乗っていれば、きっと行き着く先には、あなたの心を癒す美しい光景が待っているでしょう。